「スタメン翻訳者=求められる翻訳者」とは?

先週の3月11日に行われた、JTF翻訳環境研究会に参加してきました。
今回のテーマは「製薬会社開発の翻訳最前線・求む!スタメン翻訳者」です。

講師は製薬会社であるグラクソ・スミスクライン株式会社で
開発部門の翻訳チームに在籍されている加瀬 淑子氏です。

翻訳会社へ外注するソースクライアントでありながら、
個人(社内)翻訳者でもある加瀬氏。

受発注双方の事情を熟知した方ならではの貴重なお話を伺いました。
製薬業界の情報、そして「スタメン訳者」とは…というポイントを中心に、
抜粋してご紹介いたします。

製薬業界のお仕事とは…?
品質関連、非臨床、臨床薬理、薬事行政関連、申請関連の論文等々多岐におよぶ。。
海外カウンターパートとのやり取りの関係で翻訳依頼が夕方~夜にかけて
発生することがとても多い。また、世界の動向や各国スケジュールの影響を
常に受けるため、突発的な発注やスケジュールの組みなおしは日常茶飯事。

翻訳が申請スケジュールに影響を及ぼすことはできず、
チェックに割く時間も限られているため、スピード・質ともに
非常に高度な水準が要求される環境。

※同社の場合には業界内でも特に多数の翻訳(なんと年間1,800件・約2万ページ)が
 発生するのだそうです!

「スタメン訳者」とはどんな方?
・安定した基本翻訳力(文法、読みやすさ)、スピードと品質が伴う方
 ⇒直訳でなく、意訳しすぎず内容は落とさないのが理想。
  英文を彷彿とさせる日本語は論外。

・フレキシブルな対応ができる方
 ⇒申し訳ないとは思いつつ、スケジュールが不確定の中で発注せざるを
  得ないため、気軽に割り込みを受けてくれる方には非常に助かっている。
  同社では、発注量が少量になり過ぎないように手配するなど、
  翻訳者の方のメリットとなるように工夫しているとのこと。

・参考資料から適切に表現を引用できる方
 ⇒活用してもらうために多数の資料を渡すので、必要に応じた流用は不可欠。
  経験を積めば要所が掴めるようになるが、依頼者の意図を汲み取れるとベスト。

・悪文の原文を超越する翻訳力を持っている方
 ⇒ロジックも理解し、原稿の矛盾も指摘くださる方は大歓迎。

・依頼主の顔が想像できる方
 ⇒依頼側からのクレーム第1位は「理解して訳していない」というもの。
  「翻訳」として合っているのは当然のこと、日本語のみを読んで
  依頼者および実際にその文書を利用し業務に従事する担当者が
  理解できる仕上がりになっているかどうかが非常に重要なポイント。

「こんな翻訳よみとうなかった!」NG訳文例(抜粋)
・助詞、係り受けが誤っているなど基本的な日本語力の欠如。
・「~における」「関する」など学生の和訳のような冗長さ。
・長文(5行以上は完全NG)、受動態の多用。
・参考文献・ガイドラインを参照せず、特定の言い回しが使えない。
・複数の訳者さんによる用語の不統一。

また、会場に出席されていた方からはこんな質問が。

Q.フリーランスは定年がないといいますが、
  現在御社で活躍されている翻訳者さんの平均年齢は?
A.おそらく40代前後~50代の方が中心です。
  英語の場合には60代までかと思いますが、
  独、仏では70代の方でご活躍されているかと思われます。
  体力さえあれば上限は設定していません。


「スタメン翻訳者=求められる翻訳者」特に強調されていたのは
スピード感・フレキシビリティ」と「読みやすさ」の2点。
製薬業界特有のスピード感はあったとしても、
顧客満足度を高めるためにはどの分野でも
求められる要素は同じなのですね

常に“更なる高み”を目指し
それぞれが求められている役割を的確に遂行するべし
というプロ意識がひしひしと感じられる講演でした。


アメリア事務局
中川

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